2024.10.01
【前編】音声ガイダンスサービスを拡充、視覚障がい者の方の声が詰まったサービスがリニューアル
皆さん、こんにちは!セブン銀行 STORY of PURPOSE編集部です。
セブン銀行では、多様なニーズに応えるため、これまでさまざまな機能・サービス拡充に取り組んできました。背景の1つとして、ATMを「社会で最もやさしいデジタルチャネル」にしたいというセブン銀行の強い想いがこめられています。
今般のATMの音声ガイダンスサービス拡充も、そんなセブン銀行の想いが詰まった取り組みの1つです。
現在、セブン銀行ATMの音声ガイダンスによる取引きは、約500社の提携先でのお引出し・お預入れ・残高照会に対応。2024年10月1日からは、音声ガイダンスによるお取引に電子マネーのチャージ・残高照会が加わりました(新型ATMのみ)。
今回は開発に携わった日本電気株式会社(以下、NEC)およびセブン銀行の担当者に、プロジェクトが走り出した経緯やサービス実現に込めた想いについてお話をうかがいました!
参加者(左から):
日本電気株式会社 金融システム統括部 提箸 直紀さん
日本電気株式会社 コーポレートデザイン部 川嶋 一広さん
株式会社セブン銀行 ATMソリューション部 アライアンス開発グループ 高津 咲
目次
- ・【こだわりポイント②】ATMを触りながら考え抜いた ICカード置き場への誘導音声
- ・【こだわりポイント③】聞いた内容を覚えるストレスを緩和 金額選択方法の変更
- ・原動力は「純粋に、ATMを使っていただく方に喜んでほしい」
- ・常に寄り添い、常に進化し続けていく
始まりは「視覚障がい者の方のニーズに応えられているのか」という課題感
—はじめに今回新型ATMに導入された、音声ガイダンスサービス拡充の内容を教えてください。
セブン銀行 高津(以下、高津):従来の現金お引出し、お預入れ、口座残高照会に加え、新型ATMでは音声ガイダンスによる電子マネーのチャージ(残高照会含む。以下、チャージと表記)ができるようになりました。
ATM画面のタッチパネルやテンキーによる操作は不要で、すべてATM備え付けのインターホンによる音声ガイダンスに沿って、インターホンの数字キーを押すことで電子マネーのチャージをすることができます。
なお対応している電子マネーは「nanaco」や「楽天Edy」の他、「Suica」などの交通系電子マネー9種類を含む全12種類です(2024年10月1日現在)。
—今回のサービス拡充に至った経緯を教えてください。
高津:私たちATM開発のチームは常にどのようなニーズが市場に生まれているのか、どのような機能があればお客さまにより喜んでいただけるか、定期的に社内でブレストを行い、検討・開発を続けています。
視覚障がい者の方向けのサービスは、2007年から音声ガイダンスによる現金の入出金と残高照会機能を搭載していましたが、コロナ禍で急速に広まったキャッシュレス化の動きの中で「果たして、現行のATMは視覚障がい者の方のニーズに応えられているのだろうか」という課題意識を持つようになったのです。
そこで2022年から音声ガイダンスサービス拡充の検討を開始。視覚障がい者の方との座談会やWebアンケート、コールセンターに寄せられるご意見を参考に仕様検討を行いました。
—座談会などでは、どのような声が上がっていたのでしょうか。
高津:コロナ禍に入ったことで不便さを訴える声が多かったですね。例えば、「セルフレジが多くなったことで、有人レジでチャージのお願いがしづらくなった」や「駅の改札口を通る機会が激減したことで、オートチャージ機能が利用できない」などの声を多くいただきました。そのほか「コード決済を使ってみたい」という声もありましたね。
NEC 川嶋さん(以下、川嶋さん):今回のサービス拡充において、私は視覚障がい者の当事者という立場から、同じ障がいをお持ちの方を集めた座談会のコーディネートや、サービスの助言などをさせていただきました。
昨今のキャッシュレス化やスマートフォンの普及もあり、私含め多くの視覚障がい者の方がキャッシュレス決済を使用している、または使ってみたいと思っています。
また、アンケートの声の通り、コロナ禍以降、電子マネーのチャージがしづらい場面も出てきていました。今回のサービス拡充の件を聞いたとき、とてもうれしく思いました。
こだわり抜いた開発ポイント
—今回のサービス拡充には、視覚障がい者の方が音声取引をしやすいようにさまざまな配慮がされていると聞きました。具体的にどのような工夫がされているのでしょうか。
高津:今回の開発は本当に細かい点へのこだわりが詰まっています。特にこだわった点を3つご紹介しますね。
- 1.コンマ1秒単位でこだわった、AI音声ガイダンスの導入
- 2.ATMを触りながら考え抜いた、ICカード置き場への誘導音声
- 3.聞いた内容を覚えるストレスを緩和、金額指定方法の変更
【こだわりポイント①】コンマ1秒の単位でこだわったAI音声ガイダンスの導入
高津:1つはAIソフトを採用した音声ガイダンスです。これまでは声優の方の録音音声を繋ぎ合わせて1つにまとめた合成音声にしていました。そのため、どうしても音声のつぎはぎ感が出てしまっていたのです。
昨今のAI音声は非常にクオリティが高く、最近ではテレビのニュース番組などでも利用が増えてきていますよね。昔のような「ロボット感」がなくなり、聞いていても違和感のないレベルとなっています。我々もこの技術を利用し、より滑らかで聞き取りやすい読み上げを実現しました。
NEC 提箸さん(以下、提箸さん):AI音声は、今回の開発の中でも思い出深いアップデートです。より聞き取りやすい音声を実現するために、会議室にこもって、数十パターンも作成したAI音声を聞きながら「今の文章はここのイントネーションがおかしかったかな?」「2つ前の音声をもう一度聞きなおして確認しよう」といったやり取りをセブン銀行さんと何十時間も行いました。AI音声を聞きすぎて、ゲシュタルト崩壊(※)を起こしそうでした(笑)。
- ※物事を何度も見ているうちに全体像の意味がわからなくなる現象
高津:本当に崩壊寸前でしたよね(笑)。ガイダンスとガイダンスの間(ま)についても、NECさんに0.2秒・0.4秒・0.6秒・0.8秒・1.0秒・1.2秒の6パターンを用意していただき、どれが最適なのか、川嶋さんやテストに協力いただいた視覚障がい者の方の声も聞きながら最適解を探ったのも記憶に残っています。
高津:ちょっとしたイントネーションやコンマ1秒単位へのこだわりが絶対に必要なのかと聞かれると、なくても「利用はできる」とは思います。ただ利用していて気持ちが悪いんですよね。音声ガイダンスを聞いていて、変なイントネーションや、短すぎたり長すぎたりする間(ま)は、どうしても引っかかりを感じてしまい、操作説明が頭に入りづらくなります。
私たちはセブン銀行のATMを「社会で最もやさしいデジタルチャネル」にしたいと思っています。単純に「便利だから利用してもらう」だけでなく、「使っていて心地がいいから利用する」という体験に引き上げたい。だからこそ、このコンマ数秒にこだわる必要があったんです。
その想いを超え、日常のみらいへ。
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