経営方針、経営環境
および課題等

経営の基本方針

当社は、セブン‐イレブンをはじめとするグループの2万店以上の店舗インフラを活用し、原則24時間365日利用できるATMネットワークを構築することで、お客さまの暮らしに密着した「おサイフ」代わりの銀行サービスを「安全、確実、迅速」に提供することに努めます。

また、利便性の高い当社ATMネットワークを他の金融機関等に活用いただくことでお客さまサービスの向上や事業効率化に繋げていただく等、共存共栄の理念に基づいたサービスの実現を図ります。

さらに、グループのお客さまが求める金融に関するサービスを積極的に提供することにより、幅広いお客さまにより多くご来店いただくように努力するとともに、結果としてグループの収益力を向上させるという相乗効果を追求してまいります。

行動憲章

セブン銀行は、事業活動を展開するにあたって、「銀行は高い公共性を有し、広く経済・社会に貢献していくという重大な責任を負っている」と認識すると共に、法令を遵守し、経済・社会倫理に従って行動するという観点をも深く認識し、この実現のために不断の努力を払うことを誓うと共に、さらに不退転の決意を示すべくここに行動憲章を定めることとする。

公共的使命と社会的責任

銀行のもつ公共的使命の重みを常に認識し、経営の自己責任に基づく健全経営に徹し、その社会的責任を全うすることで社会からのゆるぎない信頼の確立を図ります。

お客さま第一主義の実践

常にお客さまの立場に立って誠意をもって接することを心がけて行動します。そして、お客さまや経済活動を支える金融インフラの安定性と安全性を確保し、環境変化や多様化するお客さまのニーズに応えるとともに、お客さまの利益の適切な保護にも十分配慮した質の高い金融サービスを提供します。

誠実・公正な行動

法令およびその精神を遵守し、社会的規範にもとることのないよう行動は常に誠実かつ公正を旨とします。そして、取引先との関係においては公正性と透明性を確保し、行政とは健全かつ正常な関係を構築、維持します。

持続可能な社会実現への貢献

良き企業市民として、地域社会および国際社会との共生と環境・社会課題の解決に取組み、持続可能な社会の実現に貢献していきます。また、経営情報の積極的かつ公正な開示をはじめとして、社会とのコミュニケーションを密にして、ステークホルダーの期待や要請を知り、自らの企業価値の向上を図ります。

人権の尊重

人権に関する国際的な規範を遵守し、役員・社員には理解・認識向上のための教育を行います。また、差別的な取扱いは行わず、雇用における機会均等に努め、さらに、お取引先に対しても、人権に配慮した形で事業が行われるように注意を払い、いかなる児童労働・強制労働・懲罰も認めません。

多様性の尊重と働きがいの向上

役員・社員の多様性や個性を尊重した能力開発とキャリア形成の支援を行います。異動・昇進・評価・処遇に当たっては、差別のない公平・公正な基準に基づいて行い、働きがいを感じられる活力ある企業風土を醸成します。また、社員の健康と安全に配慮した働きやすい職場環境を確保します。

反社会的勢力との関係遮断、テロ等の脅威への対応

市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力とは断固として対決し、関係遮断を徹底します。また、マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与やサイバー攻撃、金融犯罪などの対策を徹底し、銀行としての責務を全うします。

経営環境及び対処すべき課題等

本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度(2023年度)末において判断したものであります。

経営環境

当社グループを取巻く事業環境は国内外における物価上昇や金利上昇、デジタル技術進展に伴う決済手段の多様化や異業種の金融事業への新規参入、環境・社会課題への意識の高まり等、急速に変化しております。これまで以上に社会の変化、お客さまのニーズの多様化を敏感に捉え、技術革新の成果をスピーディーに取り入れた柔軟な経営が求められていると認識しております。
加えて格差拡大、気候変動等の社会課題が顕在化・深刻化しており、企業も社会を構成する一員として、その解決に対し、これまで以上に真摯に向き合う時代を迎えております。

中長期的な経営戦略

当社グループは、「お客さまの『あったらいいな』を超えて、日常の未来を生みだし続ける。」ために存在します。この存在意義に基づきセブン銀行はお客さまの生活に寄り添い「近くて便利」、「信頼と安心」を実現するユニークな銀行として、持続的な成長を目指してまいります。
2025年までの5カ年を当社が持続的に成長し、「第二の成長を具体化していく」期間と位置づけ、中期経営計画(2021年度~2025年度)を策定しております。本中期経営計画では、以下の3つの基本施策を推進してまいります。

基本施策

  • 1. 基幹事業であるATMプラットフォーム事業の変革と積極的な投資を通じた戦略事業分野での事業多角化
  • 2. サステナビリティを長期的な経営戦略の根幹と位置づけ、深刻化・顕在化する社会課題に対し事業活動を通じて貢献し、社会・企業双方における新たな価値創造を持続的に推進
  • 3. 持続的成長の原動力となる事業・運営の両面における企業変革(コーポレート・トランスフォーメーション)の推進

対処すべき課題

当社グループは、環境変化を更なる変革と飛躍のチャンスと捉えており、以下の課題に対処することにより、当社グループの持続的成長を実現し、お客さまや社会に必要とされる企業であり続けたいと考えております。

<国内事業(銀行業その他)セグメント>

1. ATMプラットフォーム戦略
  • これまで当社が中核事業としてきたATMの現金プラットフォーム事業は、キャッシュレス化の進展などにより、大きな転換点を迎えておりますが、従来から取り扱ってきた金融機関の現金入出金取引に加え、QRコード決済等事業会社の現金チャージ取引が大きく増加したことなどにより、当社のATM年間総利用件数は今なお増加を続けております。当社は、決済環境の変化は新しいATMサービスが生まれるチャンスであるとの認識のもと、デジタル化、キャッシュレス化の流れの中でも、リアルとバーチャルの貴重な接点として、引続きATMを通じて、お客さまに安心で便利なサービスを提供する取組みを続けてまいります。
  • 2019年9月に設置を開始し、入替を進めてきた第4世代ATMは全台数のおよそ7割以上にまで達しております。第4世代ATMで新たに実装した機能(本人認証機能、スキャニング機能等)を活用した新サービス「+Connect」は2023年9月より提供を開始し、金融機関などの諸手続きをセブン銀行ATMで行うことが可能となりました。今後も、対象エリアの拡大及びサービスの拡充を図り、セブン銀行ATMがサービスプラットフォームとして、あらゆる手続き・認証の窓口となる世界の実現を目指してまいります。
2. リテール戦略
  • 金融リテール分野では従来の金融機関等に加え、Fintech企業等様々な企業がひしめき合い、金融サービスのアンバンドリング化・多様化が進んでいます。このような中、当社は、3,000万人以上の会員数を誇る「7iD」との連携を始めとした、セブン&アイグループとの連携強化を図るとともに、流通グループ発祥の銀行ならではのユニークな金融商品を開発・提供する取組みを拡大してまいります。
  • 日本に居住する外国人居住者が増加する中、当社グループは、セブン銀行海外送金サービスやセブン銀行ATMを介した海外送金事業者との協業、海外グループ会社との連携といった強みを活かしながら、外国人居住者に使っていただきやすい金融サービスを提供することで、誰もが暮らしやすい社会を目指し、多文化共生の実現に貢献してまいります。
3. 法人戦略
  • 当社が創業来蓄積し、強みとしている銀行品質の事務処理能力や安心・安全な資金管理・資金移動の仕組み、認証などのセキュリティの高いテクノロジーについて、金融機関や一般事業者に提供するサービスの拡大を図ってまいりました。昨今、進化するDXの技術をいち早く取り入れ、外部事業者とも協力しながら事業規模の拡大に努めてまいります。

<クレジットカード・電子マネー事業セグメント>

  • 2023年7月より当社連結子会社となった株式会社セブン・カードサービスは、セブン&アイグループの決済サービス事業会社として、クレジットカード「セブンカード・プラス/セブンカード」と電子マネー「nanaco」を発行・運営し、お客さまの毎日の便利を支えています。今後は、セブン銀行のバンキング事業と一体運営することで、両社が培ってきたノウハウ・専門性と統合・拡充しつつ、グループ共通の会員基盤である「7iD」との連携を深化させていくことで、「ふだんの暮らし」に密着した金融サービスの提供に挑み続けてまいります。

<海外事業セグメント>

海外戦略
  • 米国では、米国金利の上昇により資金調達コストが増加しておりますが、ATM機内現金の圧縮対策などにより金利市場の影響を最小化する手段を講じてまいります。また、現在米国セブン‐イレブン店舗に設置している約8,600台のATMに加えて、新たにSpeedway約3,000店舗へのATM設置を開始し、全米でのATMネットワークをさらに強固なものとしてまいります。さらに、この強固なATMネットワークを基盤としながら米国セブン‐イレブンとの協業を拡大し、小売と金融を組み合わせた独自の金融サービスを提供することで、米国市場での顧客基盤の強化と事業の多角化を目指してまいります。
  • アジアでは、インドネシア・フィリピンの2カ国で、積極的なATM設置を継続しており、両国ともに国内最大規模のATM事業者にまで成長しております。両国では、利用者にとって日常生活に必要なATMが十分に設置されていないため、引続き高い需要が見込まれます。今後は両国におけるATMネットワーク網を引続き拡大させるとともに、ATMを入り口とした多層的な金融サービスの実現にも取組んでまいります。

当社グループを取り巻く環境は大きく変化し続けておりますが、当社グループが創業から大事にしてきた常にお客さまの想いに寄り添い、お応えする姿勢はこれからも変わることはありません。
当社グループは、“お客さまの「あったらいいな」を超えて、日常の未来を生みだし続ける。”というパーパスの実現に向けて、更なるサービスの向上に努めてまいります。