2024.10.04
【後編】音声ガイダンスサービスを拡充、視覚障がい者の方の声が詰まったサービスがリニューアル
本記事ではセブン銀行ATMの音声ガイダンスリニューアルの開発秘話をお届けしています。
前編はこちらからご覧ください。
- ・始まりは「視覚障がい者の方のニーズに応えられているのか」という課題感
- ・こだわりぬいた開発ポイント
- ・【こだわりポイント①】コンマ1秒の単位でこだわった、AI音声ガイダンスの導入
目次
【こだわりポイント②】ATMを触りながら考え抜いた、ICカード置き場への誘導音声
川嶋さん:電子マネーを置く「プラスエリア」に音声で誘導する表現にもこだわりましたよね。
提箸さん:電子マネーをチャージするためには、ATMのディスプレイ左下にある+ (プラス) エリアという操作エリアにICカードを置く必要があります。このエリアに音声だけでICカードを置いてもらうために、どのように誘導するのか、川嶋の助言を受けながら、音声表現を試行錯誤しました。
高津:私たちの方でもさまざまな表現パターンを出したのですが、川嶋さんには「ピンと来ないな~」なんて言われたことありましたね(笑)。
川嶋さん:とくに最初の方に出ていた案は、無意識に視覚的な情報が含まれていました。そこは全国の視覚障がい者のためにも厳しくご指摘させていただきました(笑)。
参加者(左から):
日本電気株式会社 コーポレートデザイン部 川嶋 一広さん
日本電気株式会社 金融システム統括部 提箸 直紀さん
株式会社セブン銀行 ATMソリューション部 アライアンス開発グループ 高津 咲
たとえば「左側の台に置いてください」などですね。皆さんも目をつぶって触るとわかるのですが「台ってどれ?」となるんです。
提箸さん:川嶋に言われてハッとしましたね。この件から他の開発ポイントでも無意識に視覚情報に頼っていることはないか、という点をすごく意識するようになりました。
高津:最終的に決まった表現が「電子マネーを読み取りエリアに置いてください。読み取りエリアはインターホンをお取りいただいた上の平たい台です。四角い枠の中に置いてください」でした。
とくに「インターホンをお取りいただいた上の平たい台」という表現は、当事者の川嶋さんがいたからこそ発想できたキーワードだと思います。
川嶋さん:音声ガイダンスは必ずインターホンを利用します。インターホンはちょうどATMのプラスエリアの真下に有線で繋がっていますから、電話線を手繰っていけば自然とプラスエリアの台にたどり着く。
そこが「平ら」で「四角い」というのは手で触って認識しやすいので、間違いが少ないんですね。セブン銀行ATMは全体的に丸みを帯びた形状なので、プラスエリア以外に平たい部分がないのもラッキーでした(笑)
実際にテストで視覚障がい者の方に使ってみていただいたところ、ほぼ全員がプラスエリアにICカードを置くことに成功しました!
【こだわりポイント③】聞いた内容を覚えるストレスを緩和、金額指定方法の変更
提箸さん:電子マネーにチャージする金額指定方法も今回のポイントです。インターホンの数字キーを押して直接金額を指定する方式を採用しました。
通常のチャージ取引画面では、チャージ金額をATM画面に表示されている1,000円、2,000円など、6パターンの決まった選択肢から画面タッチで選べるようになっています。これは金額入力の手間を省くための実装でした。
しかし音声ガイダンスでこれを表現すると非常にわかりづらかったんです。実際に目をつぶり、音声で6パターンの内容を聞き、どの番号がどの金額だったのか聞きながら内容を覚える、という体験を繰り返しましたが、一言一句音声に集中しなければならず、すごくストレスを感じました。これは改修が必要だな、と。
今回採用した直接金額を指定する方法は、駅の券売機におけるチャージ方法と同じ方式です。普段使い慣れているものと同じ仕様にする方が、使いやすいのではないかと判断しました。
原動力は「純粋に、ATMを使っていただく方に喜んでほしい」
―試行錯誤の末、今回のリリースに至ったのですね。サービス拡充・機能開発に向き合う原動力は何でしょうか
高津:やはり純粋に、ATMをご利用の方に喜んでいただきたいという気持ちですね。セブン銀行のATM開発は「社会で最もやさしいデジタルチャネル」を目指し、サービス拡充・機能開発を続けてきました。その際に大切にしてきたのは大多数にとっての『不』の解消だけでなく、少数のための『不』の解消も取り残さないことです。
今回は「視覚障がい者の方の生活がより便利に、そして皆さんが期待されるサービスを超えたものを提供したい」という想いで開発に携わっていました。
提箸さん:NECとしても、セブン銀行さんのパーパス・企業姿勢は十分に理解しています。お客さまの体験価値を高めたい、という想いがあるからこそ、細かい点へのこだわりが非常に強いのがセブン銀行さんのATM開発の特徴です。このこだわりを実現していくのは大変ではありますが、同時に非常にやりがいも感じますので、今後も一緒にチャレンジしていきたいですね。
常に寄り添い、常に進化し続けていく
―最後に今後の展望について教えてください。
高津:コード決済に関する要望が一定数ありました。視覚障がい者の方でもATM上で対応できるコード決済のチャージ方法があれば、当事者の方の「あったらいいな」を超えられるのではないかと思っています。
そのほかにも「ATMを今使っている人や、待っている人がいるのかどうか知りたい」というお声もありました。ATMを利用し始めるところから考えていたので、その前段階でのお困りごとをお伺いできたのは、非常に勉強になりました。ATMの利用状況がリアルタイムにわかるような仕組みも整えられたら、と思います。
これらはあくまで着想段階であり、実現できるかどうかは未知数ですが、引き続きリアルな声とニーズに応え、安心して使えるATMの実現に取り組んでいきたいと思います。
その想いを超え、日常のみらいへ。
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