2024.11.10
あの日の第0会議室:理想を諦めない。4世代にわたるコンビニATM開発の歴史と挑戦
皆さん、こんにちは!セブン銀行 STORY of PURPOSE編集部です。
1990年代、まだコンビニにATMがなかった時代、24時間365日開いているコンビニにATMを置くという前代未聞の事業を立ち上げたセブン銀行。今回は、創業以来4世代にわたって進化し続けているセブン銀行ATMについて、初期からの開発メンバーである深澤と水村に話を聞きました。
目次
時代ごとに求められる課題を優先して開発
―時を追うごとに進化しているセブン銀行ATMですが、この20年で4世代も変更されている理由を教えてください
水村:ATMというのは一般的に、1度作ったら10年間くらいは使い続けるものなので、当社はかなり早いペースで世代交代をおこなっていますね。理由は時代に合わせて、コンビニATMに最も求められていることは何かを考え、そのニーズに応えるためです。
一番左が第1世代、当時はアイワイバンクという銀行名でした
深澤:第1世代は、そもそも「コンビニATMって何?」という時代でしたので、まずは「安全で止まらないATM」を最優先に、お客さまから信頼して使ってもらえることを意識して作りました。
常務執行役員 ATMソリューション部、ATM+(プラス)企画部 深澤 孝治
水村:第2世代に重視したのが「スピード」です。入出金速度の改善に力を入れました。第3世代は「UI・UX(使いやすさ)」、最新の第4世代では、お金の出し入れだけではない、ATMのさらなる「可能性」をポイントに開発しました。
ATMソリューション部長 水村 洋一
第1世代―「ATMがあるからこそ」。誰もが安全な仕組みづくり
―第1世代ATMで「安全で止まらないATM」というコンセプトになった理由を教えてください
深澤:コンビニATMの先駆けとなるため、セブン銀行内部でも「ちゃんと動く」「安心して使える」ものでなければお客さまに使っていただけない、という意識は強かったです。
また外部から懸念する声もありましたね。コンビニにATMを設置する計画を話すと、コンビニのオーナーさまや警察からも、「コンビニが危険になる」「お金が奪われる」という声が集まりました。
水村:そこで安全に設置するための基準や、防犯のためのマニュアルを作成しました。内容は多岐に渡りますが、例えば「ATMが振動を察知すると自動的に警備会社に連絡される」「ハンマーで叩いても、決められた一定の時間はお金を奪われずに耐えられる」というものがあります。
深澤:また、有事に備えてコンビニの店員さんには首からブザーをかけてもらうルールを作ったのですが、結果的にATM関連以外の様々な犯罪の対策にもなりました。「ATMがあるから危険」ではなく、「ATMがあるからこそ安全」な仕組みができたのです。
―ATMの機能でも「安心して使える」ポイントはありますか?
水村:例えば、キャッシュカードを取り忘れた際、ATMが自動で機械の中に飲み込んで保管してくれるという機能があります。24時間以内にATM備え付けのインターホンからご連絡いただければ、本人確認を行い、その場でATMからカード返却も原則可能となっています。
一般の銀行内に設置されているATMであれば銀行員の方が対処されますが、セブン銀行ATMには銀行員が近くにいません。そのため、ATMという機械自体に、保管する機能を持たせた形です。銀行員がいなくとも、安心して使っていただくための機能ですね。
第2世代―大行列を解消すべく挑んだ「スピード」の壁
―第2世代ATMではスピード改善に力を入れたとのことですが、具体的にどのような要望があったのですか?
深澤:第1世代ATMは、紙幣詰まりからATM自体が止まってしまわないように確実性を重視して作りました。そのため入出金の速度が遅かったんです。
結果、ATMの前に行列ができてしまって。コンビニ内に長い行列ができたことで、商品棚の前も人で埋め尽くされてしまい、売れない・買えないというクレームが発生しました。
たくさんの方にご利用いただけたことによる嬉しい悲鳴ではあるものの、ATMはお金を引き出して外出したり、ご飯を食べに行ったり、あくまで通過点の立ち位置。これはすぐに改善すべきだと考え、第2世代の開発を急いだのです。
水村:第1世代リリースの約4年後には第2世代をリリースしました。第1世代の設置予定台数が7,000台だったのですが、3,000~4,000台が設置されたぐらいのタイミングで第2世代に差し替えを判断したので異例の早さでした。特別損益を出してでも早急に対応、という会社としてもかなり勇気のいる決断だったと思います。
2006年セブン銀行統合報告書より ATMを極めることへの熱い想いを語る深澤
―スピードはどのくらい改善したのでしょうか?
水村:第1世代ATMは1秒間に1枚の速度で紙幣を処理していましたが、第2世代では1秒間に6枚、第3世代では1秒間に12枚を処理できるようになりました。
―どうやって「詰まらないのに速い」仕組みを作り上げたのですか?
水村:技術的な実験・検証を繰り返した結果、ATM内に線路のポイント切り替えのような仕組みを作り、紙幣の通り道を短く・単純にしたことです。
深澤:また、全国のATMのデータが常に集積されるシステムを導入し、ATMが止まってしまう原因の情報を蓄積していきました。
スピードと省スペースの実現のため紙幣揃えは行っていません
例えば入金時、あるパーツの利用によりATMが利用できないというデータが増えた場合、その現象を詳細に確認します。するとクリップが付いたまま入金されるケースが多かったことが判明。そこでATM内にクリップが自動で振り落とされるような弁を設置しました。1つ1つは細かい工夫ですが、こういった積み重ねが進化に繋がっています。
第4世代開発時の写真 社内外のメンバー一丸で作り上げられるATM
―コンビニ内の限られたスペースに設置が多いと、機能追加・改善検討を行っても、ATM自体を大きくすることはできませんよね。取捨選択が必要かと思いますが、「捨てる」機能はどのように判断していますか?
深澤:第1世代の段階から、記帳や硬貨の取り扱いをしないなど、省スペース化のためにさまざまな機能を捨ててきました。捨てる判断を下すのはいつも難しいですが、判断基準は「限られたパーツでどれだけお客さまのニーズを多く叶えられるか」ということです。
水村:例えば、「記帳にしか使えないパーツ」など、1つの役割しか果たせないパーツは、スペースとのバランス上、取り入れることが難しくなります。
逆に、複数の役割を果たすパーツを1ついれれば、省スペースで、多くのニーズを叶えることができますよね。より便利に、より多機能に利用可能なパーツを採用することにしています。
第4世代開発時の写真 営業メンバーからも質問が飛び交います
「最高のサービスを届ける」。胸に秘めた使命
―ここまでのお話しで、開発にかける強い情熱を感じました。その原動力になっているのはどんなことでしょうか?
深澤:セブン銀行には店舗がありません。そのためお客さまのタッチポイントはATMがほとんどです。ATMによって最高のサービスを届けたいという気持ちが原動力になっています。これは、第1世代を作っているときからずっと変わらない想いです。
水村:自分たちが自信を持って「良い」と言えるものを作って、それをお客さまに使ってもらえるということが喜びですね。常に、「お客さまにとって本当に必要なものは何か」を考えながら開発を続けてきましたので、ぜひたくさん使っていただき、良さを実感していただけたら嬉しいです。
その想いを超え、日常のみらいへ。
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