社外取締役対談Dialogue

ATM事業を核に新たなサービスを付加し、さらなる成長を。
リアルの強さに裏打ちされた確かな将来性に期待しています。

社外取締役(独立役員)

木原 民

社外取締役(独立役員)

平子 裕志

木原当社の取締役会は毎回、皆さんが非常に積極的に発言されています。最初のうちは、あまりにも活発な議論に驚いたほどです。かといって決して馴れ合いにはなっておらず、健全に機能しているという印象を受けました。それが私にも刺激になって、毎回積極的に発言するように心がけています。個人的には、取締役として、より客観的、より長期的な視点でご意見差し上げるよう心がけています。

平子非常にフランクに、社内の方にとっては耳障りに思われるようなことも結構発言していますよね。私たち社外取締役に対しては、特に利益相反に対する監視機能が求められていると考えています。少数株主への配慮があるかという点も、しっかり見るようにしています。
これに加えて私に期待されているのは、攻めのガバナンスの部分でしょうか。長年のマネジメント経験を活かして、持続的な成長につながる有用な助言をしていければと考えています。

パーパスは社内に浸透。
個人の行動変容がこれからの課題

平子パーパスの策定から3年が経過し、パーパスそのものは社内にかなり浸透していると感じています。ただ、会社が掲げるパーパスと個人のパーパスとの乖離がないようにしなければ、ただの飾り物になってしまいかねません。一人ひとりが自分のキャリア形成の中で何が実現できるのかを考え、パーパスを持って仕事に臨んでいるかどうか、そしてそれを会社がしっかりサポートしているかどうかが、今後問われてくると思います。

木原私はパーパスアワードの審査会に参加させていただき、最終審査に残った8組の発表を聞いて、非常に感動しました。総務や営業、開発などさまざまな部署のみなさんがそれぞれ「『あったらいいな』を超えて」というパーパスを意識して、一歩踏み込んだチャレンジをしていることがよくわかり、パーパスが浸透していることが確信できました。ただ、パーパスというのは最終目的地であって、そこに到達するために自分自身がどうやって行動するのかというところが、まだ明確になっていないのではないかという感じを受けることもありますね。

ATMの付加価値に期待。利益水準の確保と投資戦略が今後の鍵に

木原次の成長に向けて当社が注力しているのが、中期経営計画にも掲げているとおり、ATMをプラットフォームとして新しいサービスを付加していくという「ATM+」の考え方です。ATMというリアルのハードウェアを押さえているのは大きなアドバンテージですから、いかにスピード感を持ってこれを核にした新たなサービスを拡大していけるかが、次の成長の鍵を握ると思っています。「+Connect(プラスコネクト)」で取り組む本人確認も、今後ATMのキラーアプリケーションになり得る可能性を秘めています。このあたりを核に、いかに社会に必要不可欠な、魅力あるサービスとして育てていけるかが勝負になると思います。

平子当社のATM事業の強さは、とにかく立地だと思っています。ATMは27,000台以上も設置されていますが、いずれも立地が絶妙で、まさに「あったらいいな」というところにあるんです。その立地の良さに「+Connect」で実現する機能の多さを掛け合わせると、マーケットの中でものすごく良いポジションが取れるはずです。「+Connect」ではいわゆるATM機能の充実もさることながら、それ以外のさまざまなサービスが提供できるようになります。コンビニや銀行だけでなく、空港や駅、役所などにも入ってくれば、社会インフラとなっていく可能性は十分にあると考えています。今後さらに人口減少、少子高齢化が進み、労働集約型のビジネスモデルが厳しくなると、遠出しなくても人に代わってさまざまな手続きができる近くのATMというのは、ますます価値が高まると思います。

木原中期経営計画については、スタートから3年が経ち、利益率が落ちてきていることが一番気になるところです。稼ぐ力が弱くなってきているように感じます。当社はまだまだ伸びていかないといけないですし、そのためには投資をし続けないといけません。そのためにも今後は、投資に回すお金をどうやって稼ぐかというところを、今まで以上に厳しく見ていく必要があると思っています。コストを抑えるためには目標値を設定して、施策を打って効果検証しながら達成していくというプロセスが不可欠です。当社はこれまでずっと増収増益基調を続けてきたので、あまり厳しくコスト抑制に取り組む必要がなかったと思いますが、いよいよ真剣に取り組まねばならない時期に来ていると感じています。

平子現在ATMプラットフォーム事業が連結経常収益の6割を占めているのを、複数の事業の柱を作ることにより、2025年度に4割とする目標達成に向けて、海外展開やカードビジネスなど、ATM以外の事業を伸ばさないといけません。これらをしっかりと成長させながら、中核事業であるATM事業も着実に成長させる。このバランスを取っていくために、ヒト・モノ・カネなどあらゆるリソースをどう上手に使っていくか、本当に大事な時期に差し掛かっています。とくに投資をどう位置づけていくのか、キャピタルアロケーションをどうしていくのかということが問われると思います。有効にリソースが使われているのかどうかをしっかりチェックするのも、我々の大切な役割です。もちろん株主還元とのバランスにも十分に配慮しなければなりません。

いかにスピード感を持って新たなサービスを立ち上げていけるかが、成長の鍵を握ります。

経営戦略と紐づいた人財戦略を。
多様性に富んだ人財が集まる会社に

木原事業ポートフォリオを変え、違う分野にチャレンジしていこうとするときに一番大切なのは経営戦略と紐づいた人財戦略、つまり、この戦略を実現する人財をどう確保していくか、という点に尽きると私は考えます。当社でも少しずつ改革の芽は見えていますが、経営戦略と人財戦略を紐づけるというところまでは、まだ到達できていません。これから挑戦する新しい分野にどういうスキルの人が必要なのか、それが自社で調達できるのか、できないならどうやって調達するのか、獲得するのか、育成するのか、といった戦略を細かく練る必要があるように思います。

平子若い社員が多い会社ですし、女性や外部から来た人たちも多く活躍していて、非常に多様性に富んでいる点は素晴らしいと思います。これから先はどんどん人財の奪い合い、引き抜き合戦が始まりますので、優秀な人財が外に出て行ってしまわないようにすることが大切です。逆に、有望な若者が集まってくれる会社になってもらいたいですね。

木原例えばデータサイエンティストについては、他社が採用に苦労している中で、当社は比較的集めやすいと聞いたことがあります。こういう専門性の高いスキルを持った方々は、処遇も大事ですが、いかに裁量をもって面白い仕事をできるかに惹かれる傾向があるように思います。単なる銀行ではなくて、テクノロジーカンパニーとしてのブランドイメージを確立していくような人財戦略を期待しています。
当社組織がこれからさらに拡大していく中で警戒しなければならないのは、大規模化に伴って生じがちな縦割りの弊害によって、当社の長所であるイノベーティブな企業文化・風土などが薄れてしまうことです。私は縦割りの弊害を多く経験しましたので、そうした弊害が生まれる前にうまく横串のガバナンス機能を作っていただくなど、積極的にアドバイスしていきたいと思っています。

日常の中に眠る「あったらいいな」を探す旅を、これからも続けてもらいたい。

リアルの世界にこそ当社の強みが。
新たな世界の開拓に期待

木原当社は今、新しいATMをプラットフォームとした「+Connect」の世界や、小売りと金融が融合した新たな世界を切り拓こうとしています。伸びしろが大きい非常に素晴らしい会社だと思っていて、その将来性に心の底から期待しています。一方で、何度も申し上げたとおり、今後も投資を継続していくためにはコストをもう一段抑制しないといけませんし、データ活用をさらに推進するには、そのためのガバナンスを整備する必要があるなど、新たな課題も当然出てきます。私はセブン銀行の皆さまと一緒に、より長期的かつ俯瞰的な視点で、課題を解決していくことができればと願っています。

平子これからの時代、デジタル化やバーチャルの世界での取組みが脚光を浴びがちですが、当社の一番強いところはリアルなんです。その良さをもう一度再認識することが大事で、リアルの世界の中で本質的に欲しいものを炙り出すことによって、「あったらいいな」の先が見えてくるのではないかと思っています。バーチャルの世界では無限にいろいろなことができますが、リアルの世界でも、無限とは言いませんが、イノベーションの連続でまだまだ新たにできることはたくさんあります。この中から本当にいいものをどうやって探し出し、実現していくか。おそらく日常の中にも多くの可能性が眠っています。当社にはそれを探す旅を、これからも続けてもらいたいと思っています。